共催学術セミナー4

臨床工学技士だからできる医工連携と安全対策〜輸液・シリンジポンプ編〜

吉岡 淳
山形大学医学部附属病院 臨床工学部

 日本は産業立国で優れた工業製品を産出しているが,一方,2兆4000億円の医療機器国内市場においては輸入に頼るところが大きく,治療機器に至っては輸入品の割合は50%を超えている.貿易収支でも医療機器に関しては年間7千億円以上の貿易赤字となっている.このような状況の中で,政府は日本再興戦略としてアベノミクスの3本の矢を立て経済再生を目指し,これらの政策がこの数年の医療機器開発ブームの引き金になっている.臨床と工学を合わせ持つ臨床工学技士は,医療従事者からの多くのニーズとアイデアを企業に届ける「架け橋」になれる存在である.今後,現場からの声を吸い上げ,様々なものづくりの現場でその専門性を活かしたニーズ先行型オールジャパンでの医療機器開発に携わり,貢献していくことが臨床工学技士の重要な責務の一つと考える.
 輸液・シリンジポンプは治療には欠かせない医療機器であり,薬剤等を投与する輸液療法の効率化と安全性の確保に寄与している.しかし,輸液・シリンジポンプは少量でも影響の大きい薬剤を使用していることから,操作方法を間違えれば重大な事故につながり,多くの事故及びヒヤリ・ハット事例が報告されている.臨床工学技士は輸液・シリンジポンプに対して,エラーやトラブルが少ない機種を検証し,安全対策に特化した創意工夫を見出すことで,院内での評価に大きくつながる.
 今回は当院における輸液・シリンジポンプの運用,機種選定の方法や,現在進めている輸液・シリンジポンプ関連の開発事例について紹介させていただく.

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