共催学術セミナー2

透析医療の災害対策-透析室における基本的災害対策-

赤塚 東司雄
赤塚クリニック

 透析医療は,大量の水道水・電気の安定した供給が保障されて初めて成立する医療であるから,自然災害(地震・風水害・干ばつなど)の影響を受けやすい.なかでも地震はその発生が予測困難であり,施設内設備への事前の対策が必要である点などから,これまでも相当周到な対策が提案されてきた. 透析施設に限らず医療機関は,最低限昭和56年(1981年)の建築基準法改正(新耐震)を満たしている耐震設計の建物である必要がある.少なくともそうでなければ,震度6弱程度の揺れで倒壊を免れないかもしれず,今回紹介する対策によって十分な安全は保障されない.この新耐震の基準に沿うことで,震度6弱の揺れから建物を保護し,倒壊を防ぐ前提条件が満たされる.

以下,建築方式による透析室災害対策の基本スタンスを示す.
①免震構造建築物・・・・透析室を一階ないしは二階の低層階に配置する.
②耐震構造建築物・・・・1981年新耐震後の建築物は,後述する4つの対策を採用する.
上記対策により,震度6強までの震災に対する被害を最低限に減災可能である.

震度と透析室被災の相関関係
1.震度5強以下では,基本的に深刻な透析室被害は出ない.
2.震度6弱なら非常に狭い地域で,一つないし二つ程度の透析室が短期間(2~3日)透析不能になる可能性がある.
3.震度6強はより広い範囲に存在する複数の透析室が,もっと長期に(一週間から二週間)透析不能になる可能性が高い.
4.震度7に襲われた地域の大半は,施設建物が大きく被害を受け,崩壊してしまうケースもある.ライフラインの遮断も長期化するために数十の施設で数千人レベルで,更に長期の(最大一ヶ月から二ヶ月程度)透析不能期間となる可能性が高い.

4つの基本的透析室内災害対策
① 患者監視装置のキャスターはロックしないでフリーにし,透析室内を自由に走らせる.
② 透析ベッドのキャスターはロックだけしておき,決して床面に固定しない.(患者さんの乗り降りが危険なのでキャスターロックだけする)
③ 透析液供給装置,ROは床面にアンカーボルトなどで固定する.
④ 透析液供給装置,ROと機械室壁面との接合部は,かならずフレキシブルチューブを使用する.(壁面の配管は塩ビでよい.接合部のみ)

 以上,今回の講演においては,その巨大地震に対して透析医療を継続するうえで最も重要な対策について,過去の多数の有用な事例をもとに概説する.

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