共催学術セミナー1
酸素の使い方知ってる?
尾﨑 孝平
神戸百年記念病院 麻酔集中治療部・手術部/尾崎塾
本セミナーにおいては,酸素療法について,間違った考え方や手法とは何かを述べたい.
組織の低酸素症を改善するために酸素療法は重要だか,吸入酸素濃度を上昇させるだけでは,低酸素症のすべて改善することはできない.低酸素症の原因は細胞側から大気側まで様々であるのに,吸入酸素療法は「とりあえず酸素」という発想で開始される場面が多い.とくに高い酸素飽和度(SpO2)を容認する行為は慎むべきである .
逆にSpO2が90%未満になると何らかの対応を迫られることが多いが,このような時には患者全員に酸素投与を開始すべきなのだろうか.「君」のSpO2は富士山頂では80%を以下になるのに,なぜ景観を見て感動していられるのだろうか.富士登山は危険な行為で,登山者は全員酸素を携帯すべきなのだろうか.
酸素療法デバイスについても,曖昧な目安で使用されている場面を散見する.鼻カヌラでは1L/min増加で吸入酸素濃度4%ずつ上昇するという目安は,安静呼吸時で考えたものと思われる.「あくまでも目安」という免罪符を付けて今もテキストに記載されるが,医療現場には何ら貢献していない.そもそも酸素を必要とする患者が安静呼吸をしているとは思えない.
「条件言葉の免罪符」は吸入酸素療法デバイスには非常に多いので注意すべきである.たとえば,ディフューザー付開放型マスクやリザーバー付マスクおよびカヌラなどで,能書どおりの効果を臨床で示すことは困難である.
次に設定した酸素が流れていると使用者が信じていても,実際には設定の流量が流れていないという状況が少なくない.とくにダイヤル式流量計では実流量を確認できないために注意すべきである.そのために流量抵抗の存在するネブライザーマスクなどの流量源として適さないことは使用説明書に周知される.しかし,低圧型でも流量が少なければ設定どおりの流量が確保でき,逆に高圧型であっても流量制限は発生する.抵抗を有するタイプのデバイスに関して,どの程度の流量から流量制限が発生するか全く示されていないことは制度上に不備と感じる.たとえば,同じ高流量デバイスであっても,ネブライザーマスクとベンチュリーマスクは流量制限を発生する流量が全く異なることはあまり知られていない.各種ダイアル式流量計との組み合わせデータを示す.
© 2018 第8回中四国臨床工学会. All Rights Reserved.
Produced by オンライン演題登録システム・査読システム|演題登録.com|
Produced by オンライン演題登録システム・査読システム|演題登録.com|