一般演題[ 血液透析(評価・その他)]

O-095
長時間連続運転による透析回路ポンプセグメント部の劣化と実血流量低下の発生機序についての検討

東田 篤樹(1)、宇治 博通(1)、中村 光(1)、濱崎 晃(1)、 宇野 圭祐(1)、本行 美貴(1)、小笠原 康夫(1)、小野 淳一(2)
  1. 川崎医療福祉大学 臨床工学科
  2. 川崎医療福祉大学 臨床工学科 川崎医科大学附属病院MEセンター

【背景】
 個々の患者にあった透析効率を処方するためには,実血流量が重要である.我々はこれまで,実血流量の推定を設定血流量と穿刺針における脱血特性から推定してきた.しかし,ローラーポンプ(RP)は長時間連続運転することで,ポンプセグメント部が劣化し,実血流量の低下をきたすことが報告されている.そこで,本研究ではRPを長時間連続運転させ,ポンプセグメント部を劣化させた際の脱血特性を評価し,実血流量の低下の発生機序を明らかにすることを目的とする.

【方法】
 水系実験にて,透析装置(DCS-73)に血液回路を取り付け,脱血側にの針(テルモニードル,外径24G)を装着し-300mmHgの陰圧負荷をかけ24時間循環させた.脱血特性の評価を行うために,陰圧負荷前,負荷後4,8,24時間後に,脱血,送血側回路に穿刺針(ハッピークランプキャス,外径17G,有効長33 mm)を装着し,実血流量,脱血圧,脱血流量の測定を行った.実血流量の測定には,トランジットタイム式血流計HT-310を用い,血流量,脱血圧の解析は波形解析ソフトLabchartを用いて行なった.

【結果】
 設定血流量350mL/minにおける実血流量は,開始時289.3±1.6 mL/minに対し24時間後は254.7±2.2mL/minと12.0%の低下を認めた.また,脱血圧は開始時-270.7±3.7mmHgに対し24時間後は-219.3±16.1mmHgと19.0%の上昇を認めた.この時の脱血流量波形の瞬時最高血流量は,開始時344.7±44.7mL/minに対し24時間後は275.1±14.2mL/minと20.2%の低下を認めた.

【考察】
 RPはチューブセグメント部に対してRPヘッドが押し出すことで,RP出口部に向かって血液吐出を行っている.このため,通常はRPの吐出量は,セグメント部断面積とポンプヘッドの移動距離により規定される.本研究では,長時間連続運転によりセグメント部を劣化させて,実血流量の低下を確認した.この発生機序として,長時間運転することによりセグメント部の弾性が変化し,チューブが虚脱状態から十分に復元することができなくなり,結果として断面積が減少し,実血流量の低下をきたしたことが推測された.

【結語】
 RPの長時間運転による実血流量の低下は,セグメント部の弾性の変化に伴う断面積の減少に起因することが示唆された.

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