一般演題[ 血液透析(評価・その他)]
O-091
PMDAを通じて多用途血液処理用血液回路の変更に至った経験
塚本 伶央奈、川上 千晶、山田 文哉
愛媛大学医学部附属病院 ME機器センター
【はじめに】
今回,当院にて旭化成メディカル社製血液浄化装置を用いて持続的血液浄化療法(以下CBP)を施行した際,脱血不良に伴う抗凝固薬の過剰投与を経験した.原因の精査と対策を協議した結果,現状の専用回路では安全な医療を提供出来ないと判断し,医薬品医療機器総合機構(以下PMDA)を通じて多用途血液処理用血液回路(以下専用回路)の変更に至った経緯をまとめる.
【事例経過】
旭化成メディカル社製血液浄化装置を使用しCBPを行っていた際に抗凝固薬の過剰投与が発生した.原因を精査したところ旭化成メディカル社製専用回路の抗凝固薬注入ラインは血液還流用ポンプの前方に配置されており,これにより脱血不良に陥った際に発生した陰圧が原因となって抗凝固薬が過剰に投与されているようであった.製造元からは,今回の原因は機械的,技術的な点が問題であり,現時点では脱血不良に伴う抗凝固薬の過剰投与が発生し得る問題への対応は難しいこと,全国で同様の報告はあったが医療安全情報として提供出来ていなかったとの回答を得た.そのため安全性が確立されるまでは当該機の使用を禁止することとし,製造元に対して専用回路の構成変更を依頼した.また,院内外に向けて本事例を周知するためインシデントレポートを作成し医療安全管理委員会を通じて病院全体に周知し,院外向けにPMDAへの報告を通じて本事例の不具合情報の提供及び専用回路の構成変更の必要性を訴えた.PMDAへの報告後,製造元から公式に医療安全情報が発出され,さらに抗凝固薬注入ラインが血液還流用ポンプの後方に配置された回路が販売された.現在まで,新たに販売された専用回路を用いてCBPを行っているが同様の事例は発生していない.
【考察】
当ME機器センターでは管理している機器の不具合情報に関してPMDAへ積極的に報告を行っている.本事例に関しても医療者と製造元の当事者同士のみでのやり取りとせず,第3者機関であるPMDAを加える事で円滑な連携を図ることができたと考えている.また,この経験をもとに医療機器の不具合情報及びインシデント事例に対し必要に応じて病院全体及びPMDAへの情報提供を行えるシステムを現在検討中である.システムを完成させることで医療安全の更なる発展に寄与したい.
© 2018 第8回中四国臨床工学会. All Rights Reserved.
Produced by オンライン演題登録システム・査読システム|演題登録.com|
Produced by オンライン演題登録システム・査読システム|演題登録.com|