一般演題[ 急性血液浄化・アフェレシス ]
O-089
生体肝移植待機患者に対するKM-CARTの施行経験
坂本 優実(1)、小野 裕明(1)、川端 唯斗(1)、勝冶 真理恵(1)、
原 正高(1)、斎藤 秀敏(1)、大平真裕(2)、土井盛博(3)、正木崇生(3)
- 広島大学病院 診療支援部 臨床工学部門
- 広島大学病院 移植外科
- 広島大学病院 腎臓内科
【はじめに】
当院では,非代償性肝硬変による難治性腹水貯留をきたした生体肝移植待機患者に対し,移植待機期間中は腹水穿刺排液+アルブミン(ALB)投与療法が施行されていた.2017年9月より,KM-CARTが導入され,腹水濃縮業務に加えて,移植前の患者の状態や経過を確認する機会も増えてきた.今回,KM-CARTにおける施行経験について報告する.
【方法】
2017年9月から2018年5月までにKM-CARTを施行した17名(130症例)のうち,難治性腹水貯留を認める移植待機患者9名(45症例)について検討を行った.
【結果】
採取腹水量は11.8±6.5L(2.6~27.6),採取腹水ALB濃度は43.8±28.9g/dl(6.0~138.0),腹水濾過濃縮液量は0.6±0.4L(0.1~1.6),腹水濾過濃縮液ALB量(以下,濃縮液ALB量)は25.0±15.6 g(2.5~65.6)であった.採取腹水量と濃縮液ALB量は正の相関(R=0.7331)を認め,採取腹水量10.0Lで濃縮液ALB量は約22.0gであった.また,再静注前後の患者体温は,前が36.8±0.5℃,後で37.2±0.6℃であった.CART前日と翌日の24時間尿量は前日で794.8±479.7ml,翌日で1036.9±647.2mlと増加を認めた.
【考察】
従来方式のCARTは,内圧濾過方式であることから濾過膜が閉塞しやすく,大量処理が困難であった.一方,KM-CARTは外圧濾過方式への変更に加え,濾過膜の閉塞が容易に回復する膜洗浄機能が追加されており,従来方式のCARTでは困難であった大量処理が可能である.採取腹水量と濃縮液中のアルブミン量は相関することから,KM-CARTは,アルブミン再利用の観点からは有用であると考える.採取腹水量10Lで人血清アルブミン製剤2本分のアルブミン回収が可能であり,患者自身の腹水濾過濃縮液を還元するため感染のリスク軽減などにつながると考える.また,再静注後には体温上昇は認めるが,菌血症などの発症は認めておらず,肝移植前の患者においても安全に施行できると考える.
【結論】
生体肝移植待機中の非代償性肝硬変患者において,栄養状態の維持,尿量の確保は重要であり,KM-CARTは,生体肝移植までの状態維持に有用と考える.
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