一般演題[ 急性血液浄化・アフェレシス ]
O-088
当院のCART業務における現状
岩戸 大征、原 有里、豊田英治、中川 章平、長尾 和昌、野口 友希、佐原 浩子、田村 公一
徳島市民病院 診療部 臨床工学室
【はじめに】
難治性腹水の治療法の一つとして腹水濾過濃縮再静注法(以下CART)がある.CARTでは,貯留し濃縮した腹水を体に戻すことで,自分のアルブミンを補充するため,血液製剤を介した感染が防止でき,全身・栄養状態の改善から患者のQOL向上につながる.当院ではCEによるCART業務は2009年から開始している.
【目的】
2012年4月から2018年3月までの6年間のCART業務記録から当院における現状をまとめ,問題点を抽出する.
【現状】
CARTは電子カルテオーダリングシステムを用いてオーダーされ,同時に依頼医からCEへと電話連絡を受ける.その後,CEは腹水採液前に採液バッグを病棟に届け,採液時に採液後と処理後のバッグに貼付する患者名シールの用意をしている.採液終了後,患者名が記載された採液バッグが透析室に届けられ,複数名で物品や患者名を確認し,ポンプ式で処理する.濃縮処理後に,患者名が記載されたバッグを病棟に届け,CEの業務が終了する.患者が重なった場合には,同時には行わず,午前と午後に分け実施している.
【結果】
調査の6年間で,55名の患者に123回のCARTが実施されていた.患者の内訳は,癌性腹水が38名で69%,肝性腹水が17名で31%であった.一人あたりの実施回数は癌性腹水で1回のみが14名,2回が16名,3回以上が8名,肝性腹水で1回のみが10名,2回が3名,3回以上が4名であった.患者平均腹水採取量は肝性腹水3,693g,癌性腹水3,190gであり,肝性腹水が多かった.平均処理時間は1時間38分であった.膜の目詰まりによる途中終了は2件,患者が重なったのは5件であった.
【考察】
多くの医療行為と同様にCARTも実施にあたって,採液,処理,再投与の各段階が,それぞれ別の場所で,異なるスタッフによってなされるため,多くのリスク因子がある.最も基本的な問題の一つである患者・検体の取り違えには,患者シールの使用,複数名での確認作業,実施時間をずらしての並列作業の回避で対応している.今後は,バーコード化や携帯情報端末活用などの電子カルテのシステム対応した対策も組み込めるよう検討したい.また腹水の量や性状により処理時間が影響することからポンプ式以外にも落差式の活用や改良型CARTの導入で,腹水処理方式の選択肢を増やしたいと考えている.
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