一般演題[ 急性血液浄化・アフェレシス ]
O-087
小児ホモ型家族性高コレステロール血症に対してLDL吸着療法を施行した1例
前田 友雅、栗原 大典、竹内 修三
広島市立広島市民病院 CEセンター
【緒言】
家族性高コレステロール血症(FH)はLDL受容体およびその関連遺伝子変異による遺伝性疾患である.FHの頻度は従来,FHヘテロ患者が500人に1人,FHホモ患者が100万人に1人とされ,近年は共に増加傾向との報告もある.FHは高LDL-C血症,腱黄色腫,早発性冠動脈疾患の臨床症状を有し,FHヘテロと比較してFHホモの重症度は高く,きわめて難治性である.今回小児FHホモに対するLDL吸着療法を経験したので報告する.
【症例】
患児は高LDL血症の父をもつ10歳の男児で,高LDL血症で当院紹介.国立循環器病院の遺伝子検査でホモ型FHと診断された.食事・薬物療法開始し,約2年間脂質コントロール行うが安定した改善は得られず,内シャント造設し,LDL吸着適応となった.
【方法】
血漿浄化装置カネカメディカル社製MA-03を用いて,膜型血漿分離器サルフラックスFP-02,吸着型血漿浄化器リポソーバーLA-15を使用した.現在5回のLDL吸着を経験し,初回治療時は目標処理血漿量を全血漿量の70%,2,3回目は100%,4,5回目は120%とした.
【結果・考察】
本症例は稀な疾患で,小児LDL吸着が当院で初症例のため,事前にDr,Ns,CEでのカンファレンスを行い,バイタル変動時の対応や患者の緊張,穿刺痛,長時間拘束による体動等考慮し,ICUでLDL吸着を行うこととした.治療時,シャント発達が乏しく穿刺困難で,穿刺痛による体動が激しく,鎮静剤が必要となった.ICUで行ったことで安全に治療ができたと考えられ,小児症例の初回治療は本症例同様に緊急時に対応できる環境で行うことが望ましいと考える.
次に,LDL値の減少量は,初回70%で治療前155→後82(減少率47%),2回目100%で治療前276→後110(減少率60%),3回目100%で治療前293→後126(減少率57%),4回目120%で治療前306→後102(減少率67%),5回目120%で治療前290→後99(減少率66%)という結果を得た.体重と目標処理血漿量との関係から,減少率60%を目指す場合50ml/kg,減少率70%を目指す場合60ml/kgの血漿処理量が必要であると推測された.
【結語】
小児治療を行う際のリスクを他職種間で共有し,治療環境を整えることは重要である.今後は血漿処理量とLDL値減少量の関係を追究していきたい.
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