一般演題[ 急性血液浄化・アフェレシス ]

O-085
数値計算を用いた血液透析濾過における置換液量に対するクリアランスの推定に関する研究

工藤 哲、石原 国彦
徳島文理大学 保健福祉学部 臨床工学科

【はじめに】
 血液透析治療には血液透析,血液透析濾過(HDF)等の治療様式があり患者の病態に適した様式や治療条件が選択されている.治療条件の決定に際し,予め数値計算によって異なる治療条件による治療効果を比較できれば患者の病態により適した治療条件を選択できる可能性がある.本研究では数値計算により治療効果を明らかにすることを目標として,前希釈HDFおよび後希釈HDFを例にとり置換液量の変化に対するクリアランス(CL)の変化を数値計算により検討した.

【方法】
 尿素及びβ2-MGのCLをヘモダイアフィルタにおける物質移動を新たに考案したモデルを用いて推定した.本モデルでは,ヘモダイアフィルタ内の1万本程度の中空糸膜をまとめて一つとし,血液流路と透析液流路の2つのチャンネルにわけた.また,正濾過と逆濾過が生じることを考慮するため血液入口から出口までを4つのセルに分割した.各セルにおいて血液側から透析液側へ移動する物質量XはX=Km(Cb-Cd)+ SC×Ci×QFとして計算した.ここで,Kmは膜の物質透過係数,SCはふるい係数,Cbは血液中の着目する物質の濃度,Cdは透析液中の着目する物質の濃度,QFは濾過流量である.ここで,Ci(i=b for 正濾過,i=d for 逆濾過).各セルのXの総和をヘモダイアフィルタ入口に流入する血液中の着目する物質濃度で除してCLを求めた.

【結果】
 前希釈HDFにおける尿素及びβ2-MGのCLは置換液量が15,60 L/4hrのとき,それぞれ183,171 mL/min及び75,92 mL/minであった.一方,後希釈HDFにおける尿素及びβ2-MGのCLは置換液量が10,15 L/4hrのとき,それぞれ193,196 mL/min及び89,101 mL/minであった.

【考察】
 前希釈HDFにおいて遊離水溶性小分子量尿毒素である尿素は置換液量の増加に伴う透析液流量の減少によりCLが低下し,中分子量物質であるβ2-MGは置換液流量の増加による濾過流量の増加によりCLが増加するといわれている.また,後希釈HDFにおいて尿素,β2-MGはともに置換液流量の増加に伴いCLが増加するといわれており,今回の結果はこれらと同様の傾向が見られた.よって本モデルによりCLの推定が期待できることが示された.

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