一般演題[ 心臓カテーテル・不整脈 ]

O-078
雪かきでのS-ICDの不適切作動の経験

村上 純司(1)、原 敏郎(1)、福田 勇司(1)、日野 厚志(1)、 大峠 咲弥香(1)、岩田 敬冶(1)、須山 辰也(1)、横木 遥(1)、 長谷川 ひとみ(1)、石橋 達也(1)、城田 欣也(2)、井上 義明(2)
  1. 松江赤十字病院 医療技術部 臨床工学課
  2. 松江赤十字病院 循環器内科

【はじめに】
 完全皮下植込型除細動器(以下S-ICD)は,心室細動による心臓突然死のリスクが高い患者に対して有用なデバイスである.また従来の経静脈アプローチのICDシステムに比べてリード断線や感染症等の合併症のリスクを軽減できると報告されている.しかし,他のICDと同様に不適切作動を引き起こす可能性があるため十分な対策が必要である.
 今回,雪かき中にS-ICDの不適切作動症例を経験したので報告する.

【症例】
 39歳男性.2017年9月に検診でブルガダ様心電図を指摘され当院循環器内科紹介受診.ピルジカイニド負荷陽性,EPSでVFの易誘発性を認めたためICD適応となった. 年齢,体格,基礎疾患を考慮してS-ICDを選択し,スクリーニングを行った.
 全てのベクトルで適合であったため,同年10月にEMBLEM MRI S-ICDの植込みを実施した. 設定はセンシングベクトル:プライマリ,ショックゾーン:220bpm,コンディショナルショックゾーン:200bpm,SMART Pass ONとした.

【経過】
 植込み後の経過は良好で手術1週間後退院,以後は作動なく経過していた.しかし2018年2月に職場での雪かき中にショック作動を自覚し,当院救急外来へ搬送となった.  来院後のチェックで不整脈による作動ではなく,HR上昇に伴うT波のオーバーセンシングによる不適切作動であった.
 翌日にベクトルをプライマリからセカンダリに変更してトレッドミル検査を実施.検査時にT波のオーバーセンスは認めなかったため,ベクトルをセカンダリに変更し退院となった.

【考察・結語】
 不適切作動の対策としてSMART PassをONにすることや,筋力負荷でのノイズ混入のチェック,トレッドミル検査でのHR上昇時の各ベクトルの変化を確認することなどが推奨されている.
 当院でも術前のスクリーニングでS-ICDの適応を判断し,植込み後は体位変換で最も適したベクトルを採用しリファレンスとしている.トレッドミル検査も退院後(約3ヶ月後)に予定されていたが,検査を実施する前に不適切作動に至ってしまった.また,我々の住む山陰地方は毎年降雪があり,数年に一度大雪となることがある.そのため雪かき等の除雪作業を行う必要があるが,雪かきは想像以上に重労働である.
 不適切作動を防ぐためには,検査を実施する期間,地域性や生活環境を考慮した指導が重要であると考える.

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