一般演題[ ME機器(評価・システム)]

O-067
模擬生体信号を発生可能な実験用ファントムの試作

堀 純也、井上 いづみ、片岡 祐美、佐藤 玲菜
岡山理科大学 理学部 応用物理学科 医用科学専攻

【はじめに】
 除細動器やAEDの出力評価などの研究を行う場合,生体を対象に実験するのが理想的だが,人体実験を行うのは倫理的に問題がある.また,動物実験も極力行わない方が望ましい.そこで本研究では,除細動器やAEDの出力実験に使用することを目的として,寒天培地に塩化ナトリウム(NaCl)を混合したファントムを作製し,その評価を行った.

【実験方法】
 イオン交換水2 Lに,粉末寒天培地(一般生菌数測定用標準寒天培地,アズワン株式会社)を指定量の47 g混合した.さらにNaCl(試薬特級99.5%,ナカライテスク株式会社)を加えて加熱溶解後,自作のアクリル水槽に入れた.水槽は,除細動器のパドルやAEDのパッド間隔を考慮して,底面が50 cm×50 cm,高さを15 cmとした.約2時間程度冷却させて固化したものをファントムとした.ファントムのインピーダンスが標準的な胸壁インピーダンスの値[1]である50 Ωに近づくようNaClの量を調整した.なお,インピーダンスは交流抵抗ブリッジ(LR-700,Linear Research社)で測定した.作製したファントムにAEDのパッドを貼り,認識されるかどうか検証した.さらに,パッドに触れない位置に2枚のステンレス板電極を配置し,信号発生器(SG-4105,岩崎通信機株式会社)で模擬不整脈(8 Hzの交流電圧)を加えて反応を確認した.

【結果】
 NaCl濃度を調整した結果,2 Lのイオン交換水に対して48 g(約2.4%)加えた場合にアクリル水槽の対角線上のインピーダンスが50 Ω程度となることが分かった.作製したファントム上にAEDのパッドを貼ったところ,心電図の解析が行われた.また,ファントム上に置いた2電極間に交流電圧を加えた結果,AEDがVfであると認識し,ショックが必要であることをアナウンスした.

【考察とまとめ】
 本研究の結果,寒天培地にNaClを加えることで,インピーダンスの調整が可能なファントムを作製できることが分かった.これまでにも寒天培地を用いたファントムは作製されているが,今回の実験で,生体信号をファントムに乗せることも可能であることが分かった.

【参考文献】
[1] R. E. Kerber, et. al. : Transthoratic Resistance in Human Defibrillation, Circulation, 63 : 676-682(1981).

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