一般演題[ 人工心肺・補助循環 ]
O-061
整形外科手術中に発症した肺血栓塞栓症に対しV-A ECMOを施行した一例
萩原 隆之、大村 晋悟、大山 勝士、石井 千昭
鳥取赤十字病院 医療技術部 臨床工学技術課
【はじめに】
肺血栓塞栓症(以下:PTE)は,重症例では急性右心不全から循環不全を来しショックに陥る.危険因子として長期臥床,全身麻酔などの血流停滞が挙げられ,心肺停止,ショック遷延例では補助循環による救命が必要となる.今回我々は,全人工股関節置換術中に発症したPTEに対し,V-A ECMOを施行し救命しえた症例を経験したので報告する.
【症例】
68歳女性,身長:154cm,体重:50kg,BSA:1.46m2.屋外歩行中に氷に滑り転倒受傷,左大腿骨頸部骨折で入院.入院前ADLは自立,入院後は,体動不可でありベッド上安静,両下肢弾性ストッキング装着し下肢静脈血栓予防されていた.入院10日目,全身麻酔下左全人工股関節置換術となる.手術はトラブルなく経過していたが,人工股関節挿入後洗浄中に突然の血圧,SpO2,EtCO2の低下あり.循環動態破綻.エコーにて右室拡大ありPTEを疑い,急遽閉創.造影CTを施行し両側肺動脈塞栓を認めた.FiO2 1.0で管理するもSaO2 60台,呼吸循環補助のためV-A ECMO導入となった.
【方法】
回路は,キャピオックスカスタムパックEBS心肺キットを使用.送血管は右大腿動脈よりキャピオックス15Frおよび脱血管は右大腿静脈よりキャピオックス19.5Frを挿入し,V-A ECMOを導入した.設定は,ポンプ流量:3L/min,index:2.0,gas:2.5L/min,FiO2:1.0で開始した.【結果】抗凝固療法により創部出血,貧血が進行,これに伴い脱血不良が頻繁に生じ流量の確保に難渋したが,自己肺での酸素化は安定し,翌々日にV-A ECMO離脱,5日後人工呼吸器離脱,リハビリ開始となった.
【考察】
V-A ECMOは,循環補助のみならず呼吸補助も可能であり,重症PTEに対し有効な治療手段である.一般的に内科的なPTEの治療は,血栓吸引法,血栓溶解法,抗凝固療法がある.今回,広範なPTEであること,手技的な問題で抗凝固療法が選択された.脱血不良に伴い十分なポンプ流量を得ることができなかったが,薬物での血圧維持が可能であったこと,抗凝固療法のみの治療で酸素化・呼吸状態が早期に改善したことで導入2日後のV-A ECMOの離脱に繋がった.
【結語】
全人工股関節置換術中に発症したPTEに対してV-A ECMOを施行し救命しえた症例を報告した.
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