一般演題[ 血液透析(VA)]

O-056
穿刺状態の良否を判別できる穿刺・止血トレーニングシステムの開発

玉井 駿一(1)、藤本 実和(1)、コリー 紀代(2)、小野 紗佑里(3)、二宮 伸治(1)
  1. 広島国際大学 保健医療学部 医療技術学科
  2. 北海道大学大学院 保健科学研究院
  3. 川崎医療福祉大学 医療技術学部 臨床工学科

【目的】
 血液透析治療における穿刺・止血操作の良否は患者のQOLに直結するため,治療にあたる臨床工学技士は,適切な操作方法を習得する必要がある.このため本研究室では,押圧を表示するとともに血管の感触や血流による脈動の感触を再現し,自己修復血管を用いることで止血状態の再現および繰り返しトレーニングを可能とする新しい穿刺・止血シミュレータHINT-SST (Hemostasis and Intravascular Needling Trainer by using Self Sealing Tube)の開発を進めている.しかし,研究の過程でリアリティを追求するにしたがい,穿刺の良否の判断が難しくなることが課題となった.
 そこで本研究では,正常な穿刺状態と血管外穿刺や血管貫通状態を定量的に判別し,訓練者および指導者に提示できる新しいシステムを考案・試作し,その有用性を検討した.

【方法】
 HINT-SSTは,表面に8%PVA溶液とチタン系架橋剤原液を塗布したラテックスチューブ製模擬血管,皮下組織および表皮の物性を模擬するポリウレタンゲル,押圧測定のための感圧導電センサおよび制御用マイコンで構成される.このシステムでは,穿刺孔より漏出する模擬血液(2%PVA溶液)が架橋剤と反応することで自己修復される.本研究では,HINT-SSTの模擬血管周囲のゲル層にアルミ薄膜を封入し,穿刺針とアルミ薄膜および血管内電極間の抵抗を測定することで正常穿刺および血管外穿刺・血管貫通状態を判別する.判別閾値を決定するため,穿刺針と電極間の距離0~10cmにおける抵抗値を測定し,血管外薄膜と穿刺針電極が接触した場合の抵抗値と比較した.

【結果】
 正常穿刺時の抵抗値は,2kΩ~25kΩとなった.また血管外穿刺時の抵抗値は0;4kΩとなった.この結果より,正常域を1.5kΩ~50kΩとし,1.5kΩ未満を異常域とした.正常・異常穿刺検出を示すLED表示により,操作者に対する異常状態の提示が可能であることが確認された.

【考察】
 外部から視認できない穿刺状態を訓練者および指導者に提示できるシステムを構築した.この手法により穿刺・止血技術を効率よく習得できる環境の実現が期待されるが,圧迫操作に対する薄膜電極の耐久性を検討する必要がある.今後HINT-SSTを学内実習および院内教育に導入し,その有用性を検証する.

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