一般演題[ 血液透析(VA)]

O-055
穿刺トレーニングシステムによる擬似血液制御システムの作製

甲田 梨乃(1)、田靡 幸樹(2)、西手 芳明(1)
  1. 近畿大学 生物理工学部 医用工学科
  2. 大阪大学医学部附属病院 臨床工学部

【はじめに】
 穿刺という行為は患者に対して身近な侵襲行為である.特に透析患者においては穿刺の頻度は高く,日々の苦痛でストレスになる行為といえる.また,血液浄化関連の医療事故の多くは,穿刺部における事故により発生している.

【目的】
 穿刺操作による患者の負担及び医療事故を防止するためには,操作者の穿刺技術の向上が必要である.しかしながら,現在臨床現場以外では穿刺の練習機会は少なく,トレーニング装置も簡便ではない.そこで,穿刺トレーニングをより直観的な物にし,透析装置とトレーニングシステムとの連動により他の手技と一連の動作として,穿刺技術を習得することを目的とした穿刺トレーニングシステムの作製を行った.

【方法】
 本システムは制御回路と穿刺部から構成される.制御回路は,ブレッドボード(以下:基板)上に,LEDと抵抗を直列に接続し,そこへ電磁弁(on:開)を並列に接続した.穿刺部は,模擬血管チューブ(以下:模擬血管)内に導電物を入れてシリコーンに埋め込み,その一端を制御回路と接続した.その模擬血管直下に電導布を敷き,この一端を基板のアースと接続した.そして,穿刺トレーニングに使用する通電用シリンジを電源装置と接続し,穿刺成功時はシリンジの針が模擬血管内の電導物に触れて回路が形成され,LEDは点灯し電磁弁は開く.失敗時には回路は形成されず電流が流れないため,LEDは消灯し電磁弁は閉じる.トレーニングは,擬似血液バッグを電磁弁の上流側,下流側には血液回路を接続し,透析装置DBG®-03(日機装(株))にセットし制御の検証を行った.

【結果】
 穿刺成功時は,電磁弁は開き回路に擬似血液が流れ,LEDは点灯した.失敗時は,電磁弁は閉じ擬似血液は流れず,LEDは消灯した.また,途中で抜針や針の貫通を発生させた場合も電磁弁は閉じ擬似血液は流れず,LEDは消灯した.これに連動して擬似血液が制御されて脱血不良が起こり,透析装置から静脈圧低下警報が発生した.

【考察】
 本システムにより,正確に模擬血管内に穿刺できたか否かをLEDにより即座に判断でき,電磁弁を血液回路にセットした透析装置と接続し擬似血液の制御を行うことで,抜針などが発生した場合の脱血不良が再現できたことから,穿刺に引き続き透析装置操作のトレーニングが行えると考えられる.

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