一般演題[ 人工呼吸 ]

O-045
MICSに伴う再膨張性肺水腫に対して一酸化窒素吸入療法を行った1例

小野寺 咲乃、冨貞 公貴、平賀 健一、山本 由美子、常友 宏樹、福田 翔太、松山 法道
山口大学医学部附属病院 ME機器管理センター

【緒言】
 近年,胸骨正中切開に比べ低侵襲である右肋間開胸による低侵襲心臓手術(MICS)が僧房弁手術などで積極的に導入されている.それに伴い,分離肺換気後の再膨張性肺水腫(RPE)が術後合併症として散見されるようになってきた.今回,MICSに伴うRPEに対して一酸化窒素吸入療法を行った症例を経験したので報告する.

【症例】
 67歳,女性,身長146.6cm,体重55.4kg,BSA 1.41m2.現病歴として僧房弁狭窄兼閉鎖不全症,三尖弁閉鎖不全症,心房細動を認め,手術となった.

【経過】
 上記症例に対し,僧房弁置換術,三尖弁形成術,左心耳縫縮,アブレーションが行われた.手術終了後の胸部X線で右肺野の透過性低下を認め,RPEを考慮し挿管下にICUへ入室した.ICU入室直後P/F比49と高度な低酸素血症を呈し通常の人工呼吸管理に加えNO吸入療法を開始した.NO吸入開始後より酸素化の改善を認めた.その後も呼吸・循環動態は悪化なく経過し,3PODに抜管,NHF管理.7PODに退室となった.

【考察】
 MICSにおける体外循環後のRPEは人工心肺に伴う虚血再灌流障害,サイトカイン産生による血管透過性亢進,過剰輸液,膠質浸透圧の低下などが原因と考えられており,片側性の肺水腫を呈す.本症例では,肺水腫に伴う低酸素血症の病態を示し,人工呼吸器管理では酸素化改善が得られず,NO 吸入を施行し酸素化の改善が得られた.NO 吸入が酸素化を改善させるのは,NO を吸入することにより,換気が十分な肺胞に近接する肺血管を選択的に拡張する一方,換気の乏しい肺胞に近接する肺血管は拡張させず,換気血流比を改善させることによると推測されている.代謝が非常に早く,低濃度で用いれば体循環中では不活化され,循環動態への影響が少ないという利点もある.本症例でも体循環系には影響を及ぼさず,酸素化の著明な改善が得られた.RPEにPEEPや高濃度酸素投与を行っても改善されない低酸素血症を伴う場合,一酸化窒素吸入療法は有効な治療手段となると考えられる.

【結語】
 今回,MICSに伴う再膨張性肺水腫に対して一酸化窒素吸入療法を行った症例を経験した.

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