一般演題[ 人工呼吸 ]

O-040
アルキメディアン・スクリューを用いた喀痰吸引用自走デバイスの試作及び性能評価

高中 七海(1)、林 友美(1)、コリー 紀代(2)、二宮 伸治(1)
  1. 広島国際大学 保健医療学部 医療技術学科
  2. 北海道大学大学院 保健科学研究院

【目的】
 気管内吸引は,気道損傷の損傷・低酸素血症などの重篤な合併症を引き起こすリスクがあるが,既存の痰吸引法では,挿入時に屈曲しない固さを有するカテーテルに陰圧をかけて痰を吸引することから,これらのリスクを根本的に回避することができない.このため気道損傷のリスクを根本的に回避できる新しい喀痰除去方法の開発が期待されている.
 本研究では,柔軟かつ径の細いカテーテルが気道粘膜モデル上を容易に走行する自走カテーテルの形状を考案・試作し,本試作デバイスと一般的カテーテルにおける気道粘膜への荷重を測定・比較することで本試作デバイスの性能について考察する.

【方法】
 4Frのシリコン製カテーテル先端を螺旋体(アルキメディアン・スクリュー)とした自走デバイスを試作した.本デバイスの気道粘膜に与える荷重の差異を評価するため,気道粘膜モデル上に水(粘度1mPa・s)および高粘性模擬痰(PVA8%溶液:粘度451mPa・s)を注入し,6名の未経験者により,本デバイスおよび臨床現場で用いられる14Frカテーテル操作を実施した.気道粘膜モデル上にかかる荷重を測定し,吸引操作におけるそれぞれのカテーテルが気道粘膜に与える荷重を比較した.吸引には市販の痰吸引器(ELENOA,東京エム・アイ商会)を使用した.

【結果】
 先端が螺旋体となった4Frのカテーテルを旋回させながら進める自走デバイスの推進力は水では微小であり,走行が困難であった.しかしながら,高粘性模擬痰では前進に必要な推進力を得ることができた.市販のカテーテルでは,荷重の最大値が129mNであったのに対し,自走デバイスでは最大値が99mNとなり,市販のカテーテルに対して小さくなることが確認された.

【考察】
 本研究で提案する自走デバイスが,実際に気道粘膜上を走行できることが明らかになった.さらに,市販カテーテルに対して20%以上接触荷重が小さくなることから,本デバイスが気管内吸引の安全性に貢献する可能性が示唆された.本方法の実用化により,在宅呼吸療法における気管内吸引を誰でも容易かつ安全に行える可能性が期待される.ただし,低粘度流体において本デバイスは走行が困難であり,細径カテーテルを使用することから吸引量も少なくなる問題点が明らかになった.今後,先端形状およびカテーテル材質の改良により,これらの問題を解決できる可能性について模索したい.

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