一般演題[ 人工呼吸 ]

O-039
挿管チューブにおける垂れ込み発生因子の基礎的検討

竹中 佑介、武藏 健裕、桑原 知優
広島国際大学 保健医療学部 医療技術学科

【はじめに】
 人工呼吸器関連性肺炎(VAP)の発生率は,ICU内の院内感染で最も多いとされているためVAPを防止することが重要だと考えられる.

【目的】
 VAPの原因である垂れ込みについて,カフのシワの状態,摸擬痰の粘度,患者の体勢(角度,体位)による影響を実験的に検討した.

【方法】
 内径20mmのアクリル製円筒管にて気道を摸擬し,挿管チューブ(TaperGuard:内径6.0mm,外径9.0mm,カフ拡張時外径20.6mm)を挿入留置した.カフはカフ圧が25㎝H2Oになるように拡張させた.カフのシワの状態(シワ有,シワ無),摸擬気道の角度(水平方向より15°,30°,45°,60°起こす),摸擬痰の粘度(1%ポテトスターチ溶液,3%ポテトスターチ溶液,5%ポテトスターチ溶液)を変化させ,計24パターンの状態を設定した.カフのシワの位置は,摸擬気道の下部になるように配置した.各パターンにて,1分間でのカフ下部への垂れ込みを重量にて測定した.同一の条件にて5回ずつ測定を行い,結果の統計学的解析はstudent’st検定を行い,p<0.05以下にて統計学的に有意な差があるとした.

【結果】
 カフのシワ無の状態ではどの条件でも垂れ込みは認められなかった.しかしカフのシワ有の状態では摸擬気道の角度が15°,30°,45°,60°の順に,摸擬痰粘度が1%時には0.09,0.102,0.478,0.748gであった.同様に摸擬痰粘度が3%時には0.012,0.036,0.086,0.268gであった.摸擬痰粘度が5%時には0,0.002,0.004,0.018gを示し,角度の上昇とともに垂れ込みが増加し,摸擬痰粘度の増加とともに垂れ込みが減少する傾向が認められた.

【考察】
 患者の体勢(角度,体位)が垂直に近づき,かつ摸擬痰の粘度が低下するほど,垂れ込み量が増加すると予想されたが,カフのシワが無い場合には垂れ込みが認められなかったことから,垂れ込みはカフのシワによる影響が最も大きいと考えられた.

【結語】
 実験結果からは患者の角度は水平に近いほどカフ下部への垂れ込みは少なくなる結果となった.しかし,水平での管理は胃内容物の逆流が生じやすくなるため注意が必要と言われている.カフのシワを無くし,患者の角度を適切に管理することにより,VAPの発生率を減少させることが出来ると示唆された.

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