一般演題[ 手術関連 ]

O-029
重症下肢虚血に対し脊髄刺激療法を施行した一例

樽井 慎(1)、高須賀 功喜(1)(2)、新免 利郎(2)(3)、若森 孝彰(2)(3)、上利 崇(2)
  1. 倉敷平成病院 臨床工学課
  2. 倉敷平成病院 ニューロモデュレーションセンター
  3. 倉敷平成病院 リハビリテーション課

【はじめに】
 脊髄刺激療法(spinal cord stimulation: SCS)は,脊椎硬膜外腔に刺激電極を挿入し微弱な電流を流して脊髄を刺激することによって,慢性疼痛を緩和させる治療である.2017年4月よりSCS治療を専門で行う倉敷ニューロモデュレーションセンターが開設され,臨床工学技士もチームの一員として治療に関与している.今回,重症下肢虚血(critical limb ischemia: CLI)に対してSCSを施行し良好な効果を得られた症例を経験したので報告する.

【症例】
 78歳女性,66歳時に左変形性膝関節症に対し手術を受けたが,その後左下肢全体の疼痛が出現するようになり,徐々に増悪して安静時の自発痛や,軽い触刺激に対して激しい痛みを感じるアロディニアが出現した.2型糖尿病,閉塞性動脈硬化症の合併もあり,両側下肢の末梢循環障害を認めた.種々の薬物治療に抵抗性であるため,SCS目的で当院紹介となった.経皮的に脊髄刺激電極を留置してテスト刺激を行った上で,刺激装置植え込みを行い,SCS療法を開始した.SCS前後の鎮痛評価にNRS(Numerical Rating Scale)を使用した.運動機能評価にTimed Up & Go test (TUG),下肢末梢循環の評価に経皮的酸素分圧(tcPO2),皮膚再灌流圧(SRPP)を実施した.測定装置はtcPO2測定装置TCM400(RADIOMETER社製),SRPP測定装置Nahri MV monitor PLUS(NAHRI社製)を使用し,左右の足背で測定を行った.

【結果】
 SCS前NRSは両下肢10であったが,SCS後は左下肢7,右下肢1となり疼痛に対して良好な改善がみられた.TUGは48.72秒から27.77秒と歩行の改善を認めた.tcPO2はSCS前左18mmHg,右25mmHg,SCS後左45mmHg,右51mmHg,SRPPはSCS前左23mmHg,右36mmHg,SCS後左45mmHg,右29mmHgであり,両下肢ともに末梢循環の改善を認めた.

【考察】
 SCSによる末梢循環障害に対する作用機序はまだ明らかになっていないが,脊髄後索線維を活性化させて,逆行性伝導により末梢血管の拡張が生じると考えられている.末梢循環障害の改善に伴い,疼痛が軽減し,歩行改善につながったと考えられる.

【結語】
 本症例において,SCSは末梢循環障害に対し良好な結果を得た.SCSはCLI治療の選択肢の一つになり得ると考えらえた.

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