一般演題[ ME機器(安全対策)]

O-020
絶縁監視装置の誤警報発生事例に関する一考察

元石 徹也(1)、島谷 洋志(1)、佐々木 恵(1)(2)、西江 和夫(1)
田中 直子(2)(3)、高山 綾(1)(2)(3)、茅野 功(3)
  1. 川崎医科大学総合医療センター MEセンター
  2. 川崎医科大学附属病院 MEセンター
  3. 川崎医療福祉大学 医療技術学部 臨床工学科

【はじめに】
 絶縁監視装置は漏電事故を防ぐ目的で,医療機器を多用し,重度な医療処置を実施する医用室に必要とされる.当院においてもICU,HCU,SCU及び手術室にS社製の絶縁監視装置を設置している.本装置は電源ラインに低周波信号を重畳させ,保護接地側で信号を検出することにより漏れ電流の発生を認識している.

【事例】
 スタンバイスイッチOFF状態のF社製生体情報モニタ,電源OFF状態のJ社製血液浄化用装置を絶縁監視装置に接続した際に漏れ電流警報が発生した.当該機器のメーカーに点検を依頼したが異常は発見されなかったため,関連施設である川崎医療福祉大学臨床工学科に協力を仰ぎ,今回の事例の原因精査を行った.

【方法】
 当該機器の保護接地端子と壁面接地端子間に自作の漏れ電流測定器を挿入し,測定器内コンデンサ間の電圧波形をオシロスコープにて観察し,漏れ電流を計測した.

【結果】
 生体情報モニタと血液浄化装置の接地漏れ電流(実効値)は,それぞれ,17.7μA,42.5μAと許容値の5000μA以下と問題はなかった.ただし,電圧波形を観察したところ,当該機器をスタンバイスイッチOFF及び電源OFF状態で充電した場合には,商用交流から発生する正弦波(60Hz)に低周波信号の重畳が観測された.

【考察】
 当該機器にはそれぞれリチウムイオン電池,鉛蓄電池が使用されている.これらの充電には,効率とセル劣化を防護する目的からパルス充電及びフロート充電方式が採用される.このような方式に伴う矩形波上の電流印加により,数10~数100Hzの周波数成分が生成される.今回検出した低周波信号はこの周波数成分の一部が保護接地端子に重畳したものと推測される.観測した波形の周波数が絶縁監視装置から重畳される信号の周波数に近似していたため,漏れ電流として誤認識したことが警報の原因である可能性が考えられる.

【おわりに】
 今回の事例を現場に周知するとともに,今後の対策については,関連委員会及びメーカー等とともに引き続き検討中である.しかし,各機器の使用状態によっては更に警報が誤作動する可能性等も示唆されている.院内における医療機器の安全使用のためにも,今後,更に誤作動原因及び解決策について検討が必要であると考える.

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