一般演題[ 学生・研究 ]

O-011
心音波形の時間的特徴量を利用した個人認証方法の検討

大亀 華菜、藤重 裕太、中川 隆文
徳島文理大学 保険福祉学部 臨床工学科

【はじめに】
 現在,指紋や掌紋,血管形状,虹彩,顔などの生体情報を使った認証が金融をはじめとする広い分野において利用されつつある.しかし,これらの認証方法では人間の身体部分を偽造したものを受け入れてしまうという問題が指摘されている.これに対して心音などの生体信号を使った方法はなりすましなどの偽装が難しいとされる.生体信号を使った認証では測定時の体調,計測環境,測定方法などによってデータが変動するため,判別の基準となるデータの作成のためには多くの個人データの蓄積が必要である.心音は,病院において医師の診断時に必ず聴診されるため,聴診による予防診断と認証を同時に行える技術を開発することで,個人が意識せずに個人認証に必要なデータを効率的に収集できる.我々はマハラノビスタグチ法(MT法)を用いた心音異常検出方法についてすでに報告した.今回この方法を生体認証に適用し評価したため報告する.

【方法】
 本方法ではすべての個人を識別するのではなく,登録された個人かそうでないかをマハラノビスの距離(MD値)の大きさで判定する.まず,被験者の心尖部においてデジタル聴診器で心音を測定する.次に,聴診データから心臓動態の変化に対応する7種類の特徴量を計算する. 特徴量の計算においては心拍変動の影響をなくすためI音間の時間で規格化し,波形の包絡線を計算しピークの位置や振幅などの特徴量を計算する.特徴量データを標準化し,判別の基準となる統計的基準空間を作成する.特徴量の相関行列とその逆行列よりMD値を計算する.MD値が指定した閾値以上であれば他人と判断し,閾値は本人を示す教師データから決定する.全ての特徴量の総当りで最大のMD値を計算する.

【結果と考察】
 提案した方法を10人の被験者に適用した. まず1回の聴診時間は30秒とした.被験者の1人を40回聴診し基準空間を作成した.つぎに20回聴診したデータを教師データとし閾値を決定した.他人の心音について複数回認証を行いその平均を判別精度とした.その結果,90%の判別精度を得た.しかし,心音波形が似ている者では特徴量の違いが顕著ではないためさらに判別精度を上げるためには特徴量の種類を増やす必要があると考える.

【結論】
 MT法により心音を使った生体認証が可能である.また,MT法でデータを判別するためには統計的基準空間の作成が重要であることが分かった.

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