一般演題[ 血液透析(患者管理)]

O-006
妊娠をした透析患者に対する血圧コントロール

山下 大輔、栗原 大典、竹内 修三
広島市民病院 CEセンター

【はじめに】
 透析患者にとって妊娠と出産はリスクが高いが,適正な透析によって出産の成功例は増えてきている.今回,妊娠32週から出産後までの患者の透析を経験したので報告する.

【対象】
 36歳女性.原疾患IgA腎症.30歳で透析導入.透析歴6年3ヶ月.34歳で第1子,35歳で第2子を出産.他院にて透析施行中で,今回は第3子の出産に伴い妊娠32週目で当院へ入院となった.入院時の透析条件はダイアライザAPS15EA,DW60.5kg,透析時間4時間,血流量180ml/min,抗凝固剤は低分子ヘパリン初回400U,持続800U/hであった.

【方法】
 妊娠した患者の透析では,透析前のBUN値を50mg/dl未満,透析回数を週4回以上,透析時間を20時間/週以上行い,またDWは羊水の増加と胎児の成長に合わせて,妊娠14週未満で1~1.5kgの増加,妊娠14週以降で週当たり0.3kg~0.5kgずつの増加がガイドラインで推奨されている.今回は妊娠32週であったため,透析回数を週6回,透析時間を4時間,出産までのDWは1週間毎に0.2kgずつ増加することとした.抗凝固剤は,出産当日から2日後まではナファモスタット初回0mg,持続25mg/hとした.

【経過】
 DWは61.1kgまで増加し,除水量は1.54±0.36kgの範囲で除水を行った.また,透析前のBUN値は49±17mg/dlであった.透析中の血圧は90~140mmHg台で変動はあるが,頻回透析による透析時間の確保と適正なDWの変更を行ったことで,問題なく透析を施行できた.妊娠36週に帝王切開にて女児を出産した.出産翌日はICUで透析を施行した.以降はDW56.2kg(-4.9kg)へ変更し,週3回透析を施行した.出産から6日後に退院となった.退院から現在まで母子共に経過良好である.

【考察】
 妊娠34週目以降において,血圧の変動が大きく見られた.妊娠した透析患者の血圧コントロールは,妊娠週数で適切な増加時期によるDWの変更と,週当たりの透析回数を多く施行することで1回透析当たりの除水量を少なくし,血圧変動を最小限にすることが重要であると考えられた.

【結語】
 今回,妊娠をした患者の透析を経験した.出産を迎える患者の透析を経験したスタッフは少なかったが,無事に出産を迎えることができた.今後は,胎児の発育を観察した最適な透析も施行していきたい.

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