一般演題[ 血液透析(患者管理)]
O-003
多発性脳梗塞症例に対し耳朶血流量を患者バイタル指標とした血液透析療法
栗原 大典、竹内 修三
地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院 CEセンター
【はじめに】
血液透析療法(HD)施行時の患者バイタルの指標として,非観血的血圧測定,呼吸心拍監視や経皮的動脈血酸素飽和度測定などが一般的に用いられることが多い.その中で患者バイタルとしてよく用いられている非観血的血圧測定は,一定の間隔で測定を行い連続的に観察していないので急変時の対応に遅れることがある.特に,意識レベルの低下した患者では自ら訴えがないため対応が遅れる可能性がある.今回,多発性脳梗塞を発症し意識レベルが低下した患者に対して,レーザ血流計を用い耳朶血流量を患者バイタルの指標としてHDを施行し,患者バイタルの変化に迅速に対応できた症例を経験したので報告する.
【対象】
対象は65歳,女性.主訴は両下肢浮腫.自宅で歩行困難となり当院ERへ救急搬送後,ICUへ入室しHD開始となる.第6病日意識障害がありCT撮影で多発性脳梗塞を確認.第13病日ICUから一般病棟へ転棟し透析センターでHD開始となった.
【方法】
耳朶血流量のモニタリングを行うため,JMS社製レーザ血流計ポケットLDF(LDF)を用いた.LDFは,レーザ・ドプラー・フォローメトリー法により非侵襲的に血流量を測定できる.耳朶にクリップユニットを装着し,血流測定はHD開始前までにモニタリングを開始した.HD開始に血流量の基準値を設定し,基準値からの血流量変化をモニタリングした.
【結果および考察】
レーザ血流計を用いて耳朶血流と血圧低下の関係性を示した実験で,健常な被験者の大腿部をカフで加圧し圧迫解除による体液シフトを起こし血圧低下を誘引した場合,耳朶血流は血圧に同期して一過性の減少反応を示すことが確認されている文献がある.今回の症例では,耳朶血流測定開始時の血流量を基準値1とした場合,血圧低下時に最小で0.5前後となり耳朶血流量が低下し,脳梗塞発症患者でも同様の結果となった.耳朶は手指末梢と異なり交感神経支配が少なく,交感神経刺激による血流反応の影響を受けにくいことから,脳梗塞後でも耳朶血流と血圧は連動した反応を示めすと考えられた.
【結語】
HDで脳梗塞発症患者に対し患者バイタル指標として耳朶血流量を用いた症例を経験した.レーザ血流計で耳朶血流をモニタリングすることは,血圧変動時の対応に適していると考えられる.
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