特別講演 Ⅱ
市民公開講座 Ⅱ 医療機関での安心安全な電波環境の構築

医療機関での安心安全な電波環境の構築

加納 隆
滋慶医療科学大学院大学 医療管理学研究科 医療安全管理学専攻

 病院内で電波を利用する医療機器として代表的なのが,入院患者の心電図等をモニタリングする医用テレメータであるが,携帯電話・PHSや無線LAN(Wi-Fi)等の電波を利用する情報通信機器の普及も目覚ましく,医療スタッフだけでなく病院を利用する患者・家族等の日々の生活に欠かせないものとなっている.この中で,医療機器への影響が心配される携帯電話の使用については,総務省において,平成26年8月に「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」が策定され,その使用が緩和されたこともあり,患者・家族と医療スタッフ双方の携帯電話・スマートフォンの利用拡大が進みつつある.
 一方,患者モニタ用の医用テレメータならびに電子カルテ用の無線LANに関しては,電波不到達や混信などの電波に関するトラブルが顕在化してきている.そこで,総務省では電波環境協議会(EMCC)の中に「医療機関における電波利用推進部会」を立ち上げ,厚労省との連携のもと関係識者による詳細な検討が行われた.その成果として平成28年4月に「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」が発行された.この手引きの中でも筆頭に挙げられている医用テレメータの電波管理であるが,少なくとも臨床工学技士がいる施設では,臨床工学技士が主に担っているというアンケート結果がある.しかし,どの施設でも十分に力を入れて電波管理に臨んでいるかというと必ずしもそうではないような気がする. 本講演では,「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」の中で,特に臨床工学技士の業務と関わりの深い医用テレメータに関する部分を中心に,同じ手引きに書かれている無線LANならびに携帯電話の部分についても言及する.また,手引きの内容を実施する際の参考として発行された「運用規定」,医用テレメータの受信障害対策ならびに病院関係者に対する教育ツールについても紹介する.この教育ツールには啓蒙・啓発動画やリーフレットの作成,さらにe-learningコンテンツの公開などがあるが,その積極的な活用が望まれるところである.
 今後,医療現場に次々導入されると考えられる電波利用機器を,安心・安全を担保した上で活用して行くことが求められる時代を迎える中,臨床工学技士は,生命維持管理装置の操作及び安全管理だけでなく,病院内電波管理体制の構築についても,そのリーダーシップを執って行くべきではないかと考える.

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