特別講演 Ⅰ
市民公開講座 Ⅰ 医工連携による医療機器開発

医工連携による医療機器開発におけるマネジメント

岡久 稔也
徳島大学大学院医歯薬学研究部 地域総合医療学

 医療機器産業の振興は成長戦略の一つであり,日本のものづくり技術や最先端技術を活かした医療機器開発や人材育成が進められている.徳島大学・大学病院は,医療機器分野新規参入の中小企業である(株)タカトリ(徳島LEDバレイ関連企業,奈良県)とコンソーシアムを構築し,医工連携事業化推進事業(課題解決型医療機器等開発事業,平成25〜27年度,経済産業省/AMED)の採択を受け,既存の濾過器・濃縮器との組み合わせで簡単に使用できる胸腹水濾過濃縮専用装置を開発し,平成28年8月に承認を取得した.さらに,イノベーション対話ツール(大学等シーズ・ニーズ創出強化支援事業,平成26年度,文部科学省)を活用した気付きに基づく新しい技術開発によって改良を加え,平成30年3月に小型低価格モデルの承認を取得した(中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業,平成27〜28年度,NEDO).
 この迅速な研究開発は,伴走コンサルを通じて事業化に向けてのマネジメントを的確に行うための専門的な指導を継続的に受けたことによる.また,大学病院の敷地内のインキュベーションセンターに,企業,大学,大学病院のメンバーが一つの部屋で過ごす集中研方式の研究開発室を設けてチームビルディングを促進し,デザイン思考を導入してラピッドプロトタイピングを始めとする研究開発技法を学んだことも有効であった.研究開発では,チーム内およびコンソーシアム内の各メンバーが目的を共有し,知財,薬事,事業化などに関する知識を持ち,企業,大学,医療機関のそれぞれの状況をお互いに十分に理解し,成長していくことが必要である.医療機器開発は企業が中心であり,大学は,シーズの提供や開発機器の臨床評価に加え,学会を通じて安全基準やガイドラインの制定に向けての安全性や有効性の検証を積極的に行っていく必要がある.
 本講演では,自験例を通じて医療機器開発を行う際のポイントについてまとめるとともに,本学における医療機器開発に関する学生教育の現状,ニーズドリブン手法による医療機器開発エコシステムの構築に関する取組,医療機器開発による医療現場の活性化などについても報告する.

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