パネルディスカッション 3
High Flow Nasal Cannula Therapy

HFT 一般的な事柄と加温加湿の重要性

山本 信章
順天堂大学医学部付属浦安病院

 High Flow Therapy(以下HFT)は近年急速な拡大が見られ,急性期や慢性期を問わず様々な症例で使用されている.それに伴いHFTに関する学会発表も数多く行われている.当初は高流量で発生する“圧”によって酸素化が改善されると仮定され,そのアプローチからの報告も多く行われた.実際にも胸郭の膨らみやEITでの計測でも肺容量の拡大がみられたが,現在では“圧”ではなく上気道のCO2洗い流し効果と吸いやすさが主な効果であると言われている.機械や用具からアプローチされた報告も多く,呼吸回路や鼻カヌラに関するものも多かった.HFTを構成する用具のうち吸入気を加温加湿する人工呼吸器用加温加湿器が非常に重要な部分であり,加温加湿に関する報告も多くあったので主なものを紹介する.回路はヒーター外巻きタイプの方が温度管理に合わせて湿度管理にも有利である.保育器等の周囲温度が通常の室温ではない環境下では回路の工夫が必要である.専用器であっても相対湿度100%にはならない.空炊き状態は被験者の違和感によってチャンバー内の水が少なくなった時点で検知される.口腔内乾燥患者に鼻カヌラを使ったHFTを行ったことで良い湿潤状態が得られた.等々が報告された.我々の施設で特に加湿の重要性を感じたのは冬期になると人工呼吸器を装着されていない気管切開チューブの患者が分泌物凝固による呼吸不全となる例が多く発生していた.人工鼻やネブライザー,家庭用の加湿器ではなく人工呼吸器用の加温加湿器によるHFTを行うと発生件数は低下した.人工呼吸器用の加温加湿器使用が奏効したと思われる.このような理由から経鼻だけではなく気管切開チューブを挿入されている症例にも我々の施設では積極的に使用するようにしている.
 その他,気管内チューブを介した人工呼吸管理後の酸素投与に鼻カヌラによるHFTを使用することが多くある.離脱直前の吸気ピークフローをグラフィックモニターにて確認し,抜管後のHFTフロー初期設定に反映させている.この際,使用直後の加温加湿器と吸気回路を使用することでHFT開始直後から十分に加温加湿された吸入気を投与することができる.HFTは高流量の吸入気を経鼻または気管内チューブに直接投与することから,低温低湿度ガスの粘膜への影響は非常に大きいことが考えられるため,人工呼吸器と同等の加温加湿が必要であると考えられる.

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