基調講演
世界が求める日本の医療と臨床工学技士

国際支援活動を通じて感じた臨床工学分野の必要性

北岡 豊永
徳島赤十字病院

 2017年より,アフリカザンビア共和国においてザンビア人心臓血管外科チームの育成を目的としたNPO法人TICO主導による国際医療支援活動に参加している. 臨床工学技士としての活動の主な目的は心臓血管外科チームに必要なザンビア人体外循環士(Perfusionist)の人材育成であり,ザンビア大学教育病院と徳島赤十字病院にてカリキュラムを組みトレーニングをおこなっている.
 体外循環技術全般における技術習得を目的としたトレーニングの内容は,症例に応じた体外循環計画の立案,基本的な人工心肺回路の構成やセッテイング,モニター管理方法などの知識習得や水回しによる操作,トラブルシューティングなどである. また,心臓周術期管理に必要な人工呼吸器や人工腎臓装置の知識や操作,保守管理技術習得にも力を注いでいる.
 ザンビア国内の医療機関では医療機器を専門に扱うBioMedical Engineerが存在するが,臨床において幅広く機器を扱う専門職は存在しない. よって,日本の臨床工学技士がおこなう代謝,呼吸,循環,医療機器管理業務に関する知識や技術がザンビアの医療全体において欠かせないことは,これまでの支援活動を通して日本側とザンビア側双方において強く認識できている.
 我々は今後もザンビア人体外循環士の人材育成とともに,日本の臨床工学技士をモデルにしたトレーニングを続ける計画である.  今後,ザンビア国内においては臨床工学技士に近い資格制度が整うこと,そして教育機関が創設され,先では多くの人材が輩出されることを期待している.

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