大会長招請講演

実体験から患者の気持ちを得てみましょう!

梶原 吉春
社会医療法人財団 大和会 東大和病院 臨床工学科

 私は平成4年3月,東京電子専門学校を卒業し,同年4月に3次救急の総合病院(696床)に就職した当時,手術室,ICU,NICUがありましたが,臨床工学技士業務はほぼ無い状況でした.採用理由は同年7月,血液浄化センター(15床)をオープンさせるための教育スタッフとして,看護師にプライミング・穿刺・返血・透析原理・患者指導・シャント管理などを7月までに教育して欲しいとのことでした.困りますよね!まず,私は学生時代の実習病院先に状況を説明し,臨床実習をさせて戴き,この状況を乗り越えました.オープン初日,患者様は一人,穿刺は私が行いました.穿刺見学していたスタッフ(看護師)は10名でしたが,緊張したかというとあまり覚えていないので緊張はしなかったのではないかなと思います.平成5年,心臓カテーテル室がオープンし,更に翌年,心臓血管外科の開心術開始となり,すべての臨床工学技士業務を立ち上げました.
 私が呼吸療法と出会ったのは平成9年,「3学会合同呼吸療法認定士」を取得するために勉強してからでした.平成10年頃から加温加湿器に興味を持ち,加温加湿器や人工鼻の評価を研究することで,加温加湿性能に違いがあることに気付きました.私が使用していた加温加湿器はF&P社製MR730でしたが,その当時,主流となっていた加温加湿器はCascade型やPassover型のF&P社製MR410(温度コントロールができず,吸気回路にヒータワイヤが無いタイプ)であり,日本では人工呼吸管理されている患者様の痰が固くなり,蒸留水などを使用したネブライザをすることが一般的になっていました.その後も学会やセミナーで加温加湿の重要性を報告してきましたが,なかなか変わらないのが現状でした.平成20年頃から,ようやく温度コントロールできる加温加湿器が普及しました.更に新しいデバイスである「高流量酸素療法」の登場とともに呼吸管理に重要なことは,患者様の環境であり,高流量酸素療法の最大のメリットは加温加湿であるとも言われるようになり,加温加湿の重要性を伝え続けて良かったと感じる瞬間でした.
 招請講演では大先輩からの教えと感謝,また後輩には今からでも遅くないので,「どのような臨床工学技士を目指したらよいのか迷っている方,どのような教育をしたらよいのか」などの「道しるべ」になって戴けるようなお話をしたいと思います.

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