大会長招請講演

臨床工学技士の誕生と血液浄化領域における各種認定資格

山下 芳久
埼玉医科大学 保健医療学部 臨床工学科

 1974年に高額療養給付が制度化し,わが国の透析医療は急速な発展を遂げるようになった.透析患者が増加するに従って,医師のみでこの治療を担うことは困難となり本来の業務に支障をきたしかねない状況となった.この事態を重くみた一部の医師は,透析装置に関連した透析業務を中心に従事させるため医療技術(機器)養成所(専門学校など)を卒業した技術者を次第に雇用するようになった.これが透析技師の誕生である.
 透析技師の増加に伴い無資格者が治療業務を担うことに懸念が表明され,新たな医療職の法制化への気運が高まり,透析療法合同専門委員会は設立した.そして,透析技師の資格法制化と制度化を実現するために厚生省へ要望書を提出した.厚生省は国家資格ができるまでの暫定的措置として学会レベルの資格を提案したため,透析療法合同専門委員会は透析技術認定士制度を1980年に発足させ,第1回透析技術認定士認定試験を実施し,透析技術認定士が誕生した.
 1973年に設立した透析療法合同専門委員会(5学会),1980年に発足したClinical Engineering 基本問題検討委員会(日本ME学会),1981年に設置した臨床工学技士調査委員会(日本医科器械学会)の3つの委員会の代表者により,合同委員会が設立された.そして本格的に資格法制化へ向けて検討が開始された.1982年に合同委員会より,基本的概念と教育カリキュラム案が提出された.そして,1987年5月27日,第108通常国会参議院本会議において,臨床工学技士法が可決成立し,同年6日月2日に公示され,翌年の1988年4月1日に本法律は施行された.同年,第1回臨床工学技士国家試験が実施され,この年に臨床工学技士は誕生した.
 その後,血液浄化領域において,透析技術認定士,アフェレシス認定技士,血液浄化専門臨床工学技士,透析技能検定試験2級,急性血液浄化認定指導者,透析技能検定試験1級などの各種認定資格が作られ,更に今年度より,公益社団法人日本臨床工学技士会による,医療機関および在宅医療において,医療機器の運用と管理と治療を適正かつ安全に施行するため臨床工学技士に必要な資質を担保する認定臨床工学技士制度がスタートした.その最初に「認定臨床工学技士・血液浄化」が作られる予定となっている.
 以上,臨床工学技士の誕生と血液浄化領域における各種認定資格について述べさせていただき,今後の臨床工学技士の未来についても考えていきたい.

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