大会長招請講演

「継続は力なり,こだわって生きてみる」

加納 隆
滋慶医療科学大学院大学 医療管理学研究科 医療管理学専攻

 工学部を卒業しただけで医学知識もない私が,縁あって入職した都内の病院は,その当時,心臓外科手術件数が多いことで有名で,直属の上司は心臓外科医であった.その上司から言われたことは「君は臨床半分,研究半分をやりなさい」で,実際,その言葉通りに手術室,ICU,透析室や心臓カテ室の臨床業務に携わる一方,最初の研究テーマである「循環系ならびにIABP装置の電気的シミュレーション」に取り組み,さらにこの結果と心臓外科医と行った動物実験の結果を比較する研究に携わった.この成果は私の最初の学会発表となったが,これ以降,現在に至るまで,テーマは替わっても学会発表を行わない年はなかった.IABP装置については,その後も微少ガスリークを検知する新しい安全装置の開発や,IABPの心電図の乱れによる誤トリガを防ぐアルゴリズムの開発に加えて,最近では病院内ネットワークを利用したIABP装置を含む生命維持装置の遠隔監視システムの開発を試みている.このように一つの装置にこだわり続けていると連鎖的に研究開発の新たなアイデアが浮かぶ.
 また,私のもう一つのこだわりのテーマに「病院内の電波管理」がある.平成9年3月に,「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」が,当時の郵政省(現,総務省)の指示の下,不要電波問題対策協議会から発表されたが,このときの調査研究メンバーに加わったのがそもそものきっかけとなった.この調査研究は,その後も植込み型医療機器への影響調査を中心に行われていたが,平成26年8月には17年ぶりの改正となる「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」が出された.この作業部会には,私を含め3名の臨床工学技士がメンバーとして加わっていた.一方,携帯電話以外で電波を利用する医用テレメータならびに電子カルテ用無線LANに関しても,電波不到達や混信などの電波に関するトラブルが顕在化してきていた.そこで,総務省は電波環境協議会の中に私が座長を務める「医療機関における電波利用推進部会」を立ち上げ,その成果として平成28年4月には「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」が発行され,その後の活動は現在も継続して進められている.いつの間にか「病院内の電波管理」のテーマは私自身のライフワークとなったようである.
 あらためて,「継続は力なり,こだわって生きてみる」ことをお薦めしたい.

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