教育講演 3

学術委員会企画 論文を書いてみよう!

横山 武志
九州大学大学院 歯学研究院 歯科麻酔学分野

 近年,日本からの科学論文が減少しているという.確かに,某製薬会社と研究者によるデータ捏造や,女性研究者による自殺者まで出した論文捏造などにより,日本からの論文投稿が非常に厳しい目で見られている.この他,某医師による172論文捏造は現在の世界記録である.一方で,自ら執筆した(とされる)論文が少ないのに学会の重鎮として君臨し,有名国立大学の医学部教授から病院長ついには学長まで上り詰めた人物もいる.このような論文執筆の本来の意義が見失われている現状で,モチベーションを維持するのは難しいが,このような現状だからこそ小さくても意義ある論文を書きたいものである.
 世界的な有名雑誌に掲載されるような研究は,才能だけでなく多額の研究費が必要だったり,専門技術を持つ人材を要するものが多い.一朝一夕にできるものではない.不可能とは言わないが,日々の臨床に忙殺されている状況ではかなり難しい.しかし,それぞれの専門領域における小さな疑問の解決方法や新しい工夫を,それに興味を持つ読者のいる専門の雑誌に報告することはそれほど難しいことではない.医療者であれば,その立場に応じて担当する患者の治療に貢献するだけでなく,システムも含め医療そのものを進歩させたり,後進の教育に対しても責任を持たなければならない.永遠に臨床が続けられるわけでないから,いつかリタイアする日が来る.その時,ただ仕事として漫然と臨床に従事してきたというのではなく,僅かでも自ら医学の進歩に貢献した証を残したいと思う.
 論文は,日記のような個人的で単純な記録ではない.どれほど小さな報告であっても専門領域を共有する読者に対して共通の言語を用いて有益な情報を提供するものでなければならない.そのためには日々の臨床の中で個々の症例に注意を払い,常に問題意識を持ち,伝える価値のある何かを見出す必要がある.さらに著者自身が何を伝えたいのかということを明確に自覚し,書き方の規則を守り,正しい記載で簡潔に伝えることが重要になる.難しいようだが,コツを掴めばそれほど大変なことではない.今回は,私の経験に基づいたいくつかの簡単な論文執筆のためのコツを紹介したいと思う.

CLOSE
© 2018 第8回中四国臨床工学会. All Rights Reserved.
Produced by オンライン演題登録システム・査読システム|演題登録.com|