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カフ上部吸引における体勢(体位・角度)と痰性状が吸引量へ及ぼす影響に関する基礎検討

桑原 知優、竹中 佑介、武藏 健裕
広島国際大学 保健医療学部 医療技術学科

【目的】
 気管チューブのカフ上部吸引は人工呼吸器関連肺炎の予防に効果的と言われている.しかし吸引時の体勢による影響については明確になっていない.そこで模擬痰の粘度,患者の体位,ベッドの角度の違いが吸引量へ与える影響について実験的に検討した.

【方法】
 内径20mmのアクリル円管にて模擬気道を作成し,気管内チューブ(内径6mm,外径9mm)を挿入留置した.カフ圧を30cmH2Oとし,カフ上部に5mlの模擬痰を貯留させた.模擬痰はポテトスターチ水溶液を使用し,低粘度痰(1%),基準粘度痰(3%),高粘度痰(5%)の3種類を作成した.体位は仰臥位,右側臥位,伏臥位の3つとし,ベッドの角度は模擬気道の角度を0,30,60,90度の4つとした.カフ上部吸引の回路は,気管チューブのサクションラインに5mlシリンジと圧力計を三方活栓で接続し作成した.模擬痰の吸引方法は,三方活栓閉塞時にシリンジで5ml吸引時の陰圧負荷を発生させ,三方活栓を開放し吸引した.吸引量は吸引前後での重量変化にて測定した.各条件にて5回ずつ測定し,student’s t検定にてp<0.05で統計学的に有意な差があるとした.

【結果】
 粘度による違い(仰臥位・30度)は1%,3%,5%の順に4.22,1.69,0.47gと吸引量が有意に減少した.体位による違い(30度・基準粘度痰)は仰臥位,側臥位,伏臥位の順に1.69,0.58,0.47gであり減少傾向を認めた.角度による違い(仰臥位・基準粘度痰)は0,30,60,90度の順に1.51,1.69,1.54,1.88gと有意差は認められなかった.

【考察】
 模擬痰粘度の上昇に伴い吸引量が低下したのは,同じ吸引圧を負荷しているため,粘度が高いほど粘性抵抗が増加したためと考えられる.また模擬痰は重力の影響で身体の底側に貯留するため,吸引孔が背側に来る仰臥位において吸引量が増加したと考える.さらに仰臥位は角度の変化に関係なく吸引孔周辺に模擬痰が集中するため吸引量に大きな差が生じなかったと考える.カフ上部吸引での推奨角度はないが,人工呼吸器関連肺炎予防バンドル2010改訂版において人工呼吸管理下では30度での管理を目安としており,30度での吸引が推奨される.

【結語】
 カフ上部吸引では,吸引孔の位置を考慮する必要があり,患者の体位やベッドの角度が吸引量に影響を及ぼす可能性が示唆された.

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