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人工心肺用ローラーポンプの装着チューブ内面に及ぼす影響について

東谷 侑亮(1)、馬渡 瑞歩(1)、石原 国彦(1)、谷川 浩司(2)
文谷 政憲(2)、氏原 友三郎(1)
  1. 徳島文理大学 保健福祉学部 臨床工学科
  2. 徳島文理大学 理工学部 ナノ物質工学科

【はじめに】
 人工心肺用ローラーポンプは流量調節や吸引が容易であり小児用の送血ポンプや吸引用として汎用されている.この使用で懸念されているのは血液損傷であり長時間の使用は血液に悪影響を及ぼすとされている.しかし,我々はローラーポンプに装着されたPVCチューブ(以下PVC)にも大きい影響が及ぼされると考え,使用後のPVCの内面を顕微鏡下で調査した結果,損傷や損傷片の遊離,溶解物と推測される現象を確認した.

【方法】
 人工心肺用ローラーポンプで送血等に使用される3/8と1/4インチのPVCの中に蒸留水を水封し,それぞれ1m程度の長さの閉鎖回路を作成した.その閉鎖回路を人工心肺用ローラーポンプに装着し,4時間のポンプ作動後のPVC内面と閉鎖回路内蒸留水を遠心分離機にかけて乾燥させたものを,デジタル顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて調査した.PVCはTERUMO社,JMS社,MERA社の3製品について比較調査した.

【結果】
 TERUMO社製については,使用前のPVC内面は滑らかであった.使用後のPVC内面は擦れた痕跡と損傷を確認した.また,ローラーポンプが当たっている部分と当たっていない部分のどちらとも使用前の滑らかさに比べ,コーティングが剥がれたような凹凸が確認された.蒸留水を遠心分離器にかけて乾燥させたものを観察すると,溶解物が固形化したものと,損傷片と思われる異物が確認された,MERA社製については,使用前からPVC内面に凹凸が確認された,使用後のPVC内面は,凹凸と擦れた痕跡が確認できた.蒸留水を遠心分離器にかけて乾燥させたものを観察すると,損傷片と思われる異物が確認された.JMS社製については,使用前のPVCは凹凸もなく滑らかなであった.使用後のPVC内面に凹凸と擦れた痕跡が確認できた.蒸留水を遠心分離器にかけて乾燥させたものを観察すると,損傷片と思われる異物が確認された.3社全てに7〜35μm程度の損傷と損傷片と思われる痕跡や異物が確認された.

【考察】
 ローラーポンプでのPVC使用は,PVC内面に多くの損傷や損傷片を発生させ,その損傷片は遊離していると考えられた.また,TERUMO社製PVCの内面コーティングは剥離溶解していることが疑われた.確認された異物に関しては,動脈フィルターのサイズが20〜40μm程度であることより,それより小さいサイズは通過してしまうことから,生体に対し悪影響を及ぼすのではないかと懸念された.

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